心臓の拍動を強く感じたことはありますか?
通常は自覚されない心臓の拍動を自覚する状態のことを「動悸がする」といいます。
原因としては心臓に由来するものと、心臓以外の要因によるものに大別されます。
心臓以外の要因としては、パニック障害や不安神経症などの精神疾患によるもの、甲状腺機能亢進症や褐色細胞腫、低血糖などの内分泌疾患によるものがあります。また発熱や貧血、妊娠中の方も、心臓が普段より活発に働いており、動悸を引き起こすことがあります。さらに、β刺激薬や抗コリン薬などの薬剤による動悸もしばしばみられます。
心臓由来の動悸を引き起こすものとしては、不整脈や心不全、高血圧などがあります。
不整脈は脈が速くなる頻脈性不整脈と、反対に脈が遅くなる徐脈性不整脈というものに分けられます。今回は頻脈性不整脈についてお話しさせていただきます。
心臓の洞結節という心拍のリズムを生み出す部分が正常に機能し、心臓が60~100回のポンプ活動を規則的に行っている状態を正常洞調律といいます。この正常洞調律の範囲を超えて、心拍数が100以上(つまり、心臓が1分間に100回以上のポンプ活動を行うこと)を頻脈、あるいは頻脈性不整脈といいます。
日常診療で多く見られる頻脈としては、洞性頻脈や期外収縮があります。
洞性頻脈は、発熱やストレス、アルコール・カフェイン摂取などの心臓以外の体の状態を反映して起こるものがほとんどです。健康な人にもみられることがあり、基本的に治療の必要がありません。
期外収縮は、そのほとんどが無症状です。人によっては、胸部不快感、動悸など自覚症状が出ることがありますが、症状があっても心臓の病気がない人に起きた期外収縮の場合、治療の必要はありません。
しかし安静時にいきなり心臓がバクバクしたり、めまいや意識消失があったり、心臓が不規則に脈を打っている場合は、治療が必要な不整脈の可能性があります。
例えば、心房細動は心房内のさまざまな部分から電気信号が発生し、心房内を旋回することで脈の乱れが起こります。心房の筋肉が細かく振動した状態になって心房の収縮が弱まり、十分な血液を心房から心室に送り出すことができなくなります。
その結果、心房内に血液が停滞し、血栓ができやすくなります。この血栓が血液の流れに乗って脳や全身の血管を詰まらせ、脳梗塞や血栓塞栓症を引き起こす恐れがあります。
治療法としては、血栓ができるのを防ぐ抗凝固薬や脈の乱れを抑える抗不整脈薬による治療、心筋の一部を熱で焼灼または凝固させて洞結節からの電気信号の伝導を調整するアブレーション治療があります。
その他にも心房粗動や発作性上室性頻拍など様々な頻脈があり、いずれにしても心電図検査やホルター心電図である程度診断をつけることができます。
早期発見、早期介入がみなさんの今後の生活の質を確保する上で重要となりますので、動悸やめまい、ふらつきなどを感じましたら、当クリニックにお気軽にご相談下さい。